眞衣ちゃんの場合
公開 2018年12月13日
脳性麻痺による痙直型の運動機能障害
4歳1か月からのLS-CC松葉杖訓練による取り組み
☆ 生育歴
在胎32週で、前置胎盤だったので帝王切開で出産。体重1782g。
NICUに約1か月入院。
初めての子どもであり、発達が遅いもののそれなりに発達しており、訓練が開始されたのは1歳3か月頃でした。
首がすわったのは5か月頃。
寝返りを始めたのは8か月頃。
自分で座るようになったのは1歳2か月頃。
四つ這いを開始したのは1歳2か月頃。
つかまり立ちを始めたのは1歳2か月頃。
歩行練習は、歩行器や腰を支えてもらいながら歩く練習をしています。
こんな発達だったので、診断がなかなかつかずに、2歳頃になって脳性麻痺と言われました。
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∞ 4歳1か月で訓練会に参加されました。
臥位から座位まで問題なし。四つ這いをきれいに行う。物につかまり立ち上がり、つたい歩きができる。
立位バランスは、重心が後方に来るために立っていられない。
PCWでの歩行はできると言っているが、重心が後方にあって歩行とは言えない。
関節可動域:足関節の背屈制限(船底足=(足の裏が全体に丸くなる)・膝が伸びない・股関節が開きにくい。
訓練の内容を停止:後ろからの介助や歩行器での歩行練習を止める。
訓練内容:足関節のストレッチ法を指導する。
→ 1か月後
SLBと歩行器を貸し出す。
SLBを履いて、歩行器で歩行練習。
※ 歩行器=ここで言う歩行器は、通常から見れば特殊な歩行器です。ハンドル型で、押して使用します。前輪は何の抵抗も無い固定輪。後輪は、方向が自由に向くことのできるキャスター。クロコダイル(歩行器の一種)を使用すれば、同じ様な使い方が可能です。クロコダイルをPCWと同じように使用している時、後方の車輪の抵抗を外して自由に動くようにする。前輪は動きを抑制している装置を外し、キャスター用の動きが可能とする。押し部の高さは、子どもの乳頭部とする。
→ 2か月後
歩行器をうまく扱い、自由に歩行している。
→→ その1週間後
ツイスター着きSLBができあがる。
立位に持ち込んで、独歩を数歩行う。
→ 3か月後
壁につかまり立ち上がり、それから独歩を10m程行う。
→ 4か月後
壁につかまり立ち上がり、30m程独歩を行う。
※ 数ヶ月後に、股・膝・足関節周囲筋筋解離術予定と決まる。
術後には、床からの立ち上がりが容易になるのでは…!
→ 5ヶ月後
股・膝・足関節の周囲筋筋解離術を受ける。
→→ 術後2日
術後の訓練に入る。
ギブス固定部を除くストレッチ・ギブス固定のままで歩行器歩行。
→→ 術後25日 訓練開始6ヶ月
ギブスカットとなる。
下肢の関節のストレッチに入る。痛がっている。
歩行練習は不能。
スタビライザでの立位に入る。
→ 6ヶ月と1週間後
松葉杖歩行訓練に入る。
下肢の痛みはほとんど無くなる。
四つ這いを良く行うようになる。
・ 術後の訓練は、術後1週間を入院中で理学療法士から受けていたが、その後は家庭で行う。週に1回の訓練を手術を受けた病院で理学療法士から受けていた。
→ 6ヶ月と2週間後
術後の痛みは、ほとんど無くなったもよう。
松葉杖歩行と歩行器歩行が行えるようになった。
術前の笑顔が戻ってきている。
→ 7ヶ月後
松葉杖で良く歩くようになっているが、下肢をぶんまわしで出している。膝を曲げて出すように指示したが… 改善できるのか?
→ 9ヶ月後
床から一人で立ち上がり、独歩を数十めーとる行える。
術後3ヶ月未満で、術前の状態を超えることができた!
床からの立ち上がりや、独歩の距離と歩容は、今後更に改善されると想像できる!
→ 10ヶ月後
床から立ち上がり、独歩を良く行うようになる。だが、時々倒れる。
階段を昇る際、股関節を正しく曲げないで、ある程度曲げたところで股関節を内旋させて、段の上に足を乗せて昇る。なかなか訂正が効かない。
→ 1年後
坂道昇降で、昇りはかなりうまくなり転ばずに昇り、転びそうになると物につかまって保持する。
降りはスピードのコントロールがつかず、転ぶことも多いが、時には転ばずに降りることもできる。
→ 1年2カ月後
床からの立ち上がりもうまくなっている!
屋内の平坦な廊下などでは、倒れることがほとんど無くなった!
階段昇降で、昇り法を一段ずつではなく交互に上るように指導した。上の段に足を上げる際、ぶん回し様で上げるので、まるで高跳びのように足を横に挙げてしまう。訂正しなければ…
→ 1年4カ月後
独歩の歩容は良くないが、歩く距離はとても伸びている!
階段昇降や歩行の際に、膝を曲げずにぶん回しで上げたり歩くことは修正できていない。
→ 1年10カ月後
コロナの影響で訓練ができていない。
保護者からメールが届く・・。
歩行の体力について質問させて下さい。
前より安定はしましたが、まだまだふらつきながら(特に屋外だと)歩いています。なかなか体力が伸びません。室内であればちょこちょこ動き回っているのですが…。やはり、「外」というのはちょっとした凸凹道や斜面などで体も神経を使うからなのでしょうか? どうしたらもっと体力が伸びていくのでしょうか?
返信として、急がずに体験を続ける事を伝えました。
→ 2年後
コロナ騒動は治まっていないが、訓練に来られた!
運動用のマットを幅30cm程空けて2枚敷き、その隙間を歩くように指導する。目的は、足をぶん回しするとマットに当たり転ぶため、転ばないためにはぶん回しをせずに股・膝をしっかりと曲げて歩く事を教えようとした。
結果は上々……!! 歩容が改善されている。だが、歩くこと以外に気分がそれてしまうと元に戻ってしまう。
→→ 1週間後
家庭の中で歩く事が増え、四つ這いはほとんど無くなったとの事。
歩容が少しは改善されたのか? 体力がついたのか? 屋外での歩行距離が伸びている!
→ 2年2カ月後
お母さんの気分として、歩行の悩みから日常生活での動作が気になるようになっている。学校に通う年齢となり、「下肢装具を自分で履く!」をどうすれば可能となるか? 等々…。
→ 2年6カ月後
地元の小学校に入学!
歩く事だけでなく、いろんな課題が親子に関わってくるが、うまく乗り越えて欲しい。
→ 2年8カ月後
学校で運動会が有り、50m走に参加し最後まで走って、グランドの観客から大きな拍手をいただいたとの事!
担任の先生からも翌日に、運動会の嬉しい喜びの言葉をお母さんがいただいたとの事!
学校での勉強では、数字の8が書きにくく、練習中との事。その他にも文字を小さく書く事等、他の友達とは異なる努力も必要のようです。
雨などの日の登下校では、雨傘をさしての歩行が難しく、お母さんの車で送り迎えをしているとの事。
→ 3年3カ月後
お母さんと向き合って立ち、下手投げでのキャッチボールができるようになったとの事!
学校に喜んで登校しているとの事!
→訓練開始3年6か月
通学も嫌がらずに通っているようです。
いろんな道を親子で考えながら歩く練習をしているようです。
→ 訓練開始4年6か月
通学にも慣れ、お母さんの見守りで通えるとの事。
傘をさしての通学は難しく、かっぱを着ての通学のようです。
→ 訓練開始5年3か月
尖足まではいかないが、足関節の背屈が難しく、膝の反張を引き起こしていると思えるので、手術を考える。
→ 訓練開始5年5か月
足関節の筋解離術を受ける。
→ 訓練開始5年6か月
ギブスカットを終える。
術前の訓練を開始。
→→ 10日後
素足でもSLBを履いてでも、独歩ができる!
歩幅を広げるように指導。分回し歩行の矯正。
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◎ これまでの経過を振り返って・・・
保護者の感想
小学校入学から1年が経過しました。
入学前は普通級に入ってクラスに馴染めるか、ついていけるか不安がたくさんありましたが、私の心配をよそに、娘は元気いっぱい学校で楽しく生活しています。
入学当時は体力面の心配もあり、登校時のみ徒歩、雨の日や下校は車で迎えに行くという生活でしたが、今では雨の日は雨合羽を着て、毎日徒歩で登下校しています。毎日の通学、学校生活で体力がまた伸びました。
学校では手すりで階段を上り下り、トイレも一人で済ます事ができています。
体育の授業や係の仕事、掃除などは娘ができる範囲の事をさせてもらっています。
校外学習では徒歩での移動後、次の時間が体育だった事がありさすがにヘトヘトでその時の体育は見学した事もありました。また、タコ上げの行事では空に上がったタコを見上げる事はできず、糸を持ちながら歩いてしまう事もあったようです。
心配していた文字を書くことは、少しずつ漢字も書けるようにもなりました。ただ文字の大きさのコントロールが難しくマス目のものが使いやすいようです。
普段の生活では入浴では私が見守る中、(手すり付きのお風呂)に自分一人で全部できるようになりました。また食器洗いが好きでたまに手伝ってくれたりします。
車の乗り降りもドアを開ける所から座ってシートベルトを閉める所までできるようになりました。シートベルトはなかなかできず、悔しさで泣く事もありました。
普段の生活の中でできない事は私が手伝う事を少しずつ手を抜いていく事が大事だと、しみじみ感じています。
課題はまだまだあり、道の段差、でこぼこや不安定な道、道を歩く時の注意力、階段での足のぶん回し、手先を使う作業など、たくさんあります。一人での通学はまだまだ難しいですが、これから毎日試行錯誤しながら頑張って行きたいと思います。
指導者の感想。
つかまり立ちからつたい歩きが可能となったのが1歳2か月頃で、4歳1か月になるまで歩行の目処は立っていなかったのでは・・?
わずかと言うのか? やっとと言うのか? 独歩が可能となりそうです。
同じような子どもが、世にはどれ程おられるのか?
独歩が可能となるはずなのに、独歩に至ることもなく「想ったよりも障害が重かったのかな?」の言葉で人生を送ることになっていたのでは・・・
・ この訓練を開始して1年が経過、他では見られない変化であり進歩と自負するのだが・・・
・ 訓練を開始して1年2カ月が経過して、独歩も安定してきているのに、ぶん回し歩行が修正できていない。階段の昇りでこの様に昇る子どもは初めてだが…
・ 運動機能の伸びていると思えるし、通学を喜んでいる事も保護者と共に嬉しい事です。
歩く事によって、人生の喜びの幅が広がると良いのだが…
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製作 LS-CC松葉杖訓練法 湯澤廣美