康煕君の場合
 公開 2019年06月28日
 脳性まひ・緊張性アテトーゼ型
 4歳2ヶ月時からのLS-CC松葉杖訓練での取り組み

☆ 生育歴
 第一子と二子が帝王切開だったので、三子も帝王切開となりました。在胎37週6日で2986gで産まれてきました。
 生後2ヶ月の時痙攣発作を起こし、大学病院で点頭癲癇と診断されました。ACTH治療を開始しましたが、1ヶ月後に再発。以降、薬の調整を行っています。
 入院中の大学病院で、リハビリが生後3ヶ月で開始されました。
 リハビリを受けていても、何の変化や成果も見ることができませんでした。
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∞ 4歳2ヶ月時に、訓練会に参加されました。
 現症:背臥位が好きのようで、ほとんどその姿勢で過ごしている。動きは乏しく、坐位保持も不能。
 関節可動域:股関節内転筋群・膝屈筋群に短縮傾向がある。両手が腰に回らない・両手が頸の後頭部に回らない。
 訓練内容:全身のストレッチ・肘立て位・腕立て位・各種座位保持・寝返り
 どのトレーニングも、行った経験が無いように見える。慣れれば肘立て位や持ち込み座位が可能となるか?
→ 1週間後
 持ち込みでの肘立て位・腕立て位・各種座位で、頭部を持ち上げている時間が伸びている。
→ 2ヶ月後
 持ち込みあぐら座位で、床に手で支えて数秒の姿勢保持ができた。
 肘立て位を少し行うようになる。
 松葉杖訓練に入る。松葉進度1。
→ 3ヶ月後
 寝返りを自分で少し行うようになる。
→ 4ヶ月後
 寝返りを行う量が増えている。
 持ち込みあぐら座位と正座で、床に手で支えて座る時間が延びている。
→ 5ヶ月後
 持ち込みあぐら座位で、床に手を着いて1分以上姿勢を維持している。
※ 肉親のご不幸によって10日間、この間訓練を行うことができなかったとのことで、肘立て位や坐位保持ができなくなっている。
 訓練ができない。大泣きとなってしまう。
→ 8ヶ月後
 徐々に訓練にも慣れて、行えるようになる。
 松葉進度2となる。
→ 1年5ヶ月後
 持ち込みあぐら座位・正座で、床に手を着いてどちらの坐位も数分の姿勢保持ができるようになる。
→ 1年11ヶ月後
 肢体不自由特別支援養護学校に入学。
→2年後
 自分で床に座ることが時々ある。
→ 4年3ヶ月後
 特別支援学校の教諭が、訓練の様子を見学に来られて、できる事を学校でも取り組むと言ってもらえた。
→ 4年10ヶ月後
 特別支援学校の教諭が訓練を見学に来られて、学校でも取り組んでもらえた結果なのか、年度末の状況は…
○ 正座・割座での姿勢が良くなった。
○ 座っている時間が延びた。
○ 上下肢の支持性がアップした。
◎ 上肢の支持性がアップしたので、四つ這い位の練習が可能となった。
◎ 下肢の支持性がアップしたので、持ち込みでの立位が容易となった。
○ 様々な姿勢や動きに対して、抵抗や拒否する態度が減った。
 これらの点は、これからの康煕君の運動機能だけでなく、知的・心意的に変化をもたらす良い兆候と考えられます。
→ 9年後
 9年間の訓練の継続で、自由に床に坐位となり、寝返りを行うようになりました。
 股関節の亜脱臼や脊柱の側弯もまだ起きていません。
 今後も現在の体調を維持できるように、保護者と共に継続していかなければ…
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◎ これまでの経過を振り返って・・・
 重度と言われる障害の程度、しかし寝たきり(寝かされたきり)ではありません!
 自分で床に座り、座った姿勢で周囲の人の動きを観察するなど、重度と言われないのかも…
 運動機能がそれ程も変化しているわけでもないが、障害を更に重くしたり、不自由な身体とならない治療が行われてきたと自負しています。
 重度と言われる障害児にとって、関節の動きに制限が有れば、股関節の亜脱臼から脱臼に、脊柱の側弯と…、この様な悪化を防いで来れています。
 寝たきりどころか、自分で床に座ることができる! 重度の障害児者ならば、坐位保持椅子や車椅子での食事や作業が当然と考えられていますが、康煕君には座卓の使用によって身体を持ち上げることが不要で、家庭内では食事も生活もできるのです。
 洋式の形態の多くなった家屋、昔からの和式の家屋でも生活できるのです。車椅子の不要な生活ができるのは…
 お出かけだけで車椅子を使用する。重度の障害児者にとって、平坦な床での生活は、安定して快く休むことができると考えています。
 生涯を渡り、固定されずに括られない生活を保証していきたいです。その為のほろーが保護者だけでなく、誰からも受けられる社会にしたいですが…

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 製作 LS-CC松葉杖訓練法 湯澤廣美