菊江チャンの場合
 
 公開 2018年12月16日
 染色体異常症による運動発達遅滞
 11歳10か月時からのLS-CC松葉杖訓練での取り組み
 

☆ 生育歴
 妊娠37週の診察で胎児が成長していないとわかり、誘発分娩にて娘は産まれてきました。1598gでした。
 生後2か月で染色体異常症13番短腕欠損と診断され、他に心房中隔欠損と巣状糸球体硬化症も見つかりました。心房中隔欠損は経過観察となり、巣状糸球体硬化症は投薬治療と決まりました。
 運動機能の発達も遅れが見え、2歳から地元の療育施設でハビリテーションが開始されました。
 首がすわったのは5か月頃。
 寝返りは、少し介助すれば寝返りをするが、自分からはやりません。
 座らせると座れるようになったのは2歳頃でした。
 4歳頃からいざり這い(尻這い)を始めました。
 自力で起きて座ったのは8歳でした。
 四つ這い移動を始めたのは8歳ですが、ほとんど行わずにいざり這いをしていました。
 今の療育施設の指導とは違う角度からのアプローチがあるのならば、体験してみたいと思いました。期待する事は、将来自律した生活ができるようになることで、その一つとして自律歩行を一日でも早く獲得したいと思っています。

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∞ 11歳10か月に、訓練会に参加されました。
 菊江ちゃんは、臥位から座位が可能だが、横座りやえんこ座りとなり、いざり這いを行う。四つ這いをさせれば行うが、いざり這いを好む。
 立位ができるのだが、物に寄りかかり立つ。引き上げるようにすれば立つが、足部に負荷がかかるようにして立たせようとすると、立つことを拒み下肢を曲げてしまう。
 関節可動域:特に問題ないが、足部が外反扁平である。
 訓練内容:椅子からの立ち上がりと床からの立ち上がり・四つ這い位と移動・介助歩行か歩行器歩行。
→ 2週間後
 四つ這いをよく行うようになるが、放置すればいざり這いを行う。
→ 1か月後
 歩行器歩行をゆっくりであるが行う。
 階段の昇り訓練をしようとしたが、拒否して全く行えない。
→→ その1週間後
 お母さんと階段の昇りを少し行えた。
→ 2か月2週間後
 階段の昇降をそれなりにうまく行うようになる。
 床からの立ち上がりがうまくいかない。
→ 10か月後
 持ち込み立位で、10から20秒ほど姿勢を維持していた。
→ 2年5か月後
 持ち込み立位から、独歩を少し始めた。
→ 2年7か月後
 持ち込み立位から、室内を数歩独歩するようになる。
 軽い介助で床から立ち上がるようになる。
 階段昇降で、軽い介助で行うようになる。
→ 2年8か月後
 椅子から立ち上がり、数十メートルほど独歩を行うようになる。
→ 3年11か月後
 高等部の入学を基に、肢体不自由特別支援学校から知的障害特別支援学校に変わる。
→ 4年7か月後
 支援学校の耐久走会で、3kmを74分で完走したとのこと!
 心房中隔欠損もそのままなのに…!
 歩くことの楽しさも少しは感じるようになっているのかも?
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◎ これまでの経過を振り返って・・・
保護者の感想
 巣状糸球体硬化症のその後ですが、薬の効果なのか主治医もよくわからないようですが、尿蛋白が(−)の状態が続いていたので、一度薬をやめてみましょうとなり、飲まなくなりました。飲まなくても尿蛋白の量が増える事もなかったので、現在も薬を飲んでいません。
 二歩・三歩と一人で歩けたと喜んでいたのもつかの間、学校でも移動を車椅子ではなくなるべく歩行を意識してもらうようにお願いしていました。すると毎日のように、独歩の歩数が増えていき、短期間で数メートル程歩けるようになったりと、娘の進歩に喜びと驚きの今日です。
 今は、学校のバスに乗るのに家からバス停まで歩いて行き、帰りはバス停を降りたら公園を一周半歩いてから家に帰ってくるのが、日課になっています。
指導者の感想。
 染色体異常の疾患であっても、この年齢から独歩を獲得することは、珍しいのではないかと考えます。
 一方、何故に幼児期にこのような進歩や改善が得られる指導ができなかったのか、疑問に思うのです。
 菊江ちゃんの指導の間違えは、坐位の獲得に有ったと思えます。横臥位からの起き上がり指導で坐位となれば、えんこ座りとなったり、横座りとなってしまいます。その結果からいざり這いを行うようになり立位が難しくなってしまうと考えるのです。
 同じ間違った指導によって、多くの子どもが運動機能が伸びないでいると思います。
 菊江ちゃんの今後の課題は、床からの立ち上がりです。間もなく獲得すると信じていますが、それ以後の指導内容をどうするのかが疑問として残ります。
 尿蛋白が(−)と改善したのには、運動能力が増して独歩に至り、有酸素運動が影響したのかも知れません。


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 製作 LS-CC松葉杖訓練法 湯澤廣美