幸助君の場合
公開 2018年12月11日
幼児の脳梗塞後遺症
3歳時からのLS-CC松葉杖訓練での取り組み
☆ 生育歴
在胎37週4日で正常分娩。出生体重3432g。
妊娠中から1歳6ヶ月検診まで、順調に成長発達。運動面の問題皆無。発語は二語文が出ないため若干遅れている気はしたものの、検診でも指摘される事は無かった。
1歳9ヶ月時、左脳梗塞発症。大学病院入院。よくよく思い返すと、1歳6から7ヶ月頃に、右手の脱力により利き手ではない左手で食事をすることがあった。しかし、順調に発育していた為に、夢にも脳梗塞や他の病気の可能性など考えもしなかった。発語が若干遅いのも今思えば言語野の脳血流が悪かった為と思われる。
1歳10ヶ月時、右脳梗塞発症。
1歳11ヶ月、県立子ども病院に転院して脳血管バイパス手術を受ける。
2歳1ヶ月で県立子ども病院退院。
左脳梗塞発症で右半身まひとなり、大学病院でストレッチ・寝返り・座位の訓練を行い、手押し車や介助ありの歩行は可能となりましたが、右脳梗塞発症で左半身まひとなった時、首のすわりや座位保持ができなくなり、嚥下も困難な状態になったが、ベッドサイドやプレイルームでのリハビリは継続されました。
県立子ども病院から帰って来た2歳3ヶ月で、療育施設のPT訓練を受けることとなり、ストレッチ・立位・歩行訓練(PCW使用)の指導を受けました。
2歳5ヶ月からは最初の大学病院で、再びPT訓練を受け、ストレッチ・立位・歩行訓練(先生が後方から腰を支えて)の指導を受けました。
県立こども病院の入院中は、一切リハビリは無く、何も知識が無かったし、私も不勉強だった為、何もしないでいたら、退院後の療育施設でのPT訓練を開始した頃にはすっかり足首等が固くなってしまっていました。
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∞ 3歳11ヶ月時に、訓練会に参加されました。
現症:臥位から座位まで問題なし。移動は四つ這いで、交互性有りスピードも有る。物に捕まらせれば立位が可能だが、重心は後方にある。歩行不能。
関節可動域:股内転と内旋・膝屈曲・足底屈筋に短縮傾向がある。右>左。
訓練内容:全身のストレッチ・床からの立ち上がり・松葉杖歩行訓練。
SLB着用。松葉進度1〜2。
介助して床から立ち上がれるが、重心は後方にある。
※ 言葉を発するが、保護者は聞き取るが、私には半分以上の言葉が意味不明である。
→ 1週間後
松葉進度3となる。
→ 2週間後
松葉進度4となる。
→ 1ヶ月後
松葉進度4の状態で、40m程歩く。
→ 2ヶ月後
歩行器歩行訓練を松葉杖歩行と並行して行う。
歩行器歩行を喜んで行い、歩行器を離そうとしない。
→ 3ヶ月後
独歩訓練に入る。
→ 4ヶ月後
持ち込み立位で、立位姿勢を数秒維持している。
持ち込み立位から、数歩の独歩を行う。
→ 6ヶ月後
階段昇降訓練に入る。階段昇降の訓練の方法は、片手で手摺りにつかまり、他の手を介助します。そして1段ずつ昇降します。これを左右共に行う。
※ 私が聞くには不明瞭であった言葉が、言葉の数も増えて、明瞭度が高まったと思える。
→ 9ヶ月後
左右の膝・足関節周辺筋の筋解離術を受ける。
→ 11ヶ月後
術前のように、松葉杖歩行が可能だが、喜んで歩く。
→ 1年後
松葉杖歩行が安定し、スピードが出てきている。
→ 1年1ヶ月後
床から一人で立ち上がるようになる。
→ 1年4ヶ月後
地元の支援学級入学。
→ 1年7ヶ月後
床から立ち上がり、数歩の独歩を行う。
→ 1年11ヶ月後
片手・片肩のいずれでも、軽い介助で独歩を100m程行う。
→ 2年5ヶ月後
階段の昇りを、片手手すり使用片手介助で交互に昇る。降りは、手すり使用と片手介助で一段ずつ降りる。
→ 3年後
両下肢にSLB着用で、床から立ち上がり、30から50m程の独歩を行う。
※ 私とのコミュニケーションは、言葉で充分に行うことができる。
→ 3年4ヶ月後
両下肢にSLB着用で独歩を行い、倒れても倒れても起き上がり、繰り返し独歩を行っている。
→ 3年8ヶ月後
後ろ歩き・横歩き・ジャンプの訓練に入る。
→ 4年2ヶ月後
後ろ歩き・横歩きが可能となる。
ジャンプは、1回ずつ行える。
床からの立ち上がりで、片膝立ちからの立ち上がりの訓練に入る。
→ 4年3ヶ月後
階段昇降で、昇りは片手手摺り使用で交互に・降りは片手手摺り使用で一段ずつ、一人で可能となる。
独歩の距離が伸び、落ち着いて行えれば、倒れることはない。
言葉の数が増え、他人との会話が成立するほどに、発語が明瞭となっている。
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◎ これまでの経過を振り返って・・・
幸助君と私が会う以前に、2箇所でPT訓練を受けていました。いずれもが歩行訓練をしていましたが、一方は後方から腰や臀部付近を介助しての歩行訓練、他の方は、PCWを使用していました。私が子どもと会い、立位の状態を診た時、重心は後方にあり後ろに寄りかかるような態勢でした。
特別支援学校の学童が介助で移動する際に、後方から腋窩や腋を介助されて、いかにも歩行しているがごとくにされています。しかし、このような介助を何年も行っていても、杖歩行や独歩に至ることなど有り得ないのです。同じように幸助君も、進歩の無い歩行指導を受けていたことになるのです。
運動能力も進歩したし、他人との会話も可能となりました。幸助君が療育施設の通園を選ぶのか?・保育所を選ぶのか?・幼稚園を選ぶのか?、保護者が悩んでいた時に、療育施設の施設長である小児科医師は・・・
「要するに知的に遅れている子を一般集団に入れても能力が伸びることは無い」と。それは「単なる親の希望でしかない」と。
知的能力が上がるのかは疑問ですが、集団生活の場で多くの刺激を受け入れ、多くの点で成長すると思えるのです。無駄とは考えられないにもかかわらず、このような発言は止めていただきたいし、発言者の人格を疑いたくなります。
幸助君がここで紹介したような訓練を体験したことは、成人や老人の卒中の後療法でも応用できると思えます。
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製作 LS-CC松葉杖訓練法 湯澤廣美