珠ちゃんの場合
 公開 2018年12月12日
 脳性まひ・失調型
 2歳時からのLS-CC松葉杖訓練での取り組み

☆ 生育歴
 在胎40週にて陣痛促進剤使用で出産。出生体重3134g。
 6ヶ月過ぎ頃に、首がすわる。
 1歳頃にお座りができず、睡眠時無呼吸の疑いで検査入院。睡眠時無呼吸の疑いははれたが、発達遅滞と筋の萎縮があるか?との診断となる。
 1歳3ヶ月頃から1歳5ヶ月頃の出来事は、いろんなことが重なった為に、月日は曖昧であるが、寝返りを初め→自力座位が可能となり→療育施設でのPT訓練が始まりました。その後に、肘這いも始めたのです。
 1歳11ヶ月頃に、四つ這いを始める。
 2歳頃になると、掴まり立ちを始めたと思います。
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∞ 2歳5ヶ月時に、訓練会に参加されました。
 現症:臥位から座位まで問題なし。ゆっくりであるが交互性有る四つ這いを行う。立位姿勢に持ち込むと、重心が後方に行く。立位不能。
 関節可動域:特に問題なし。外反扁平足。
 訓練内容:床からの立ち上がり・立位保持・歩行器歩行。(SLBと歩行器を貸し出す。)
→ 5ヶ月後
 歩行器歩行は、歩行バランスが悪く行えない。松葉杖歩行に訓練を換える。
 SLB着用。松葉進度1。
→ 7ヶ月後
 床からの立ち上がりが上手くなっている。
※ 1歳児の時に筋の萎縮を疑い、3歳少し前に、MRI検査を行い、小脳の萎縮が有ると言われ、マリネスコ-シェーグレン症候群の疑いで検査を受けることとなる。しかし検査結果は、マリネスコ-シェーグレン症候群ではないこととわかる。
→ 1年に2週間前
 松葉進度が2→3となる。
→ 1年後
 松葉進度4となる。
→ 1年2週間後
 階段昇降訓練に入る。階段昇降の訓練の方法は、片手で手摺りにつかまり、他の手を介助します。そして1段ずつ昇降します。これを左右共に行う。
→ 2年3ヶ月後
 床から一人で立ち上がり、数秒程立位を保持している。そして、2から3歩の独歩を行う。
 階段昇降が、上手くなっている。
→ 2年11ヶ月後
 毛細血管拡張性運動失調症の疑いで検査を行い、毛細血管拡張性運動失調症ではないことがわかる。
→ 3年後
 歩行器歩行訓練を再開する。歩行バランスが良くなっている為なのか、喜んでよく行う。
→ 3年3ヶ月後
 床から一人で立ち上がり、そのまま3m程独歩を行う。
→ 3年7ヶ月後
 片手手すり使用で、一人で階段昇降を行う。
→ 4年4ヶ月後
学校へ送迎はするが、基本付添なしで普通級に入学。校外学習などの時のみ、親が付き添う。
教室内では、掴まりながら独歩、廊下はクラッチ、校庭は歩行器。
・ 保護者からのメール ↓↓
 娘は先週から楽しく小学校に通っています。
 クラッチ歩行が出来る様になったことで、自分で動き回る楽しさを見つけた様に思います。
 長い時間を過ごす学校で、クラッチ歩行をすることで、皆と一緒に動きたい、遊びたい気持ちから自分自身で、自然に訓練をしているかの様に、どんどん歩行が出来る様になりました。
 木・金曜日は様子を見るために付き添いしましたが、今日から給食も始まり、付き添いもなしで頑張っています。
 送り迎えはしているので様子をみたら、教室ではクラッチなしでふらつきながらも移動してました。給食も配膳は先生にやってもらったようですが、片付けの時はお盆を両手で持って一人で独歩してました。いつかひっくり返しそうですが。
 担任の先生も良い先生でなんとかやっていけそうです。
 湯澤先生の指導のおかげで、クラッチ歩行をマスターできたのが娘にとっては自信にもなってるし、本当によかったです。ありがとうございます。
↓↓ 以下は保護者からの連絡をまとめた物です。
→ 5年後
 教室や廊下を歩く際も、クラッチを使うことが減ってきている。机や壁などに掴まりながら歩くが、ふらつきは有る。
 体育は、先生が上手く対応して下さっています。水泳は、親か空いている先生が付添。大縄跳びは、クラス別に回数を競う時は跳ばずにくぐるなど…。
→ 5年2か月後
 「学校にクラッチなくて平気」と本人が持っていくのをやめる。ふらつきはあるので心配はあるが…
 校庭では歩行器を使っているが、ドッチボールもしているとか…
→ 5年11か月後
 3歳から始めたスイミングで、プールサイドでの歩行が安定したので、親子クラスを卒業。
 普通のクラスでレッスンを受け始める。泳ぐには、まだまだ道は遠い。
→ 6年4ヶ月後
 教室が2階になるが、手すりを使って上り下りできている。
 教室移動の荷物が多い時は、友達が持ってくれている様子。
→ 6年6ヶ月後
 運動会で、カーブ有のかけっこを皆に交じって走り、完走。
 少しずつ、走れるようになってきている。真上にジャンプが出来る様になってきた。
→ 6年10ヶ月後
 歩行の課題は長い距離で疲れてしまう事。ふらつきはあるが、1年前と比べて安定している。
 運動はとても好きで、スイミングへ楽しく通い、空手を始める。
 前や横へジャンプがだんだん出来る様になってきた。
※ 珠ちゃんも載っているblogです。
→  スキーに挑戦 | さんぽの会
※  珠チャンの加入しているblogのさんぽの会です。
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◎ これまでの経過を振り返って・・・
 マリネスコ-シェーグレン症候群は、小脳失調・精神発達遅滞・先天性白内障を三徴としています。また、毛細血管拡張性運動失調症(Ataxia Telangiectasia:AT)とは、非常に多くの体の組織に影響を与える進行性であって退行性の疾病です。ATの患者は正常な健康状態で生まれますが、一般的に2歳頃に最初の症状が現れ始めます。通常、最初に現れる症状は「ふらつき」つまりバランスの障害と、不明瞭な発語ですが、これらは筋肉の調節の障がいを意味する「運動失調症」により引き起こされるものです。もう一つATの特徴である「毛細血管拡張症」すなわち「小さな赤いクモの巣状の静脈の拡張」を、眼球の端や耳の表面・また日焼けした頬に表出し始めます。ATの小児のほとんど(約70%)は、もう一つの臨床的な特徴として免疫不全、通常は反復する呼吸器感染症、を伴います。多くの患者にとり、これは致命的な疾患となりえます。感染を防ぐ血中の抗体である免疫グロブリンIgAが少ないため、ATの小児は普通の抗生物質による治療では治癒できない肺感染症に罹患する可能性が高くなります。
 小脳が原因だろうと思われる運動機能障がい児に対して、多くの医師によって他の疾患を捜す傾向に有るようです。疑いを糾すことは大切ですが、疾患の主たる徴候から外れるような疾患で有るにも関わらず、検査しようとすることは、子どもと保護者に迷惑と負担をかけるだけでなく、無駄な健康保険請求を行うことになります。
 脳の損傷に伴う運動機能障がいの総称が脳性まひなのですから、まずはこの疾患を主とした上での適切な検査を求めたいものです。
 この子は、それなりに運動機能が伸びています。今後の改善と進歩を願っています。 

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 製作 LS-CC松葉杖訓練法 湯澤廣美