遠景

 

               とおい遠景の中に

               君がいたように思う

               とおい街の雑踏の中で

               君とすれちがったことがあったように思う

 

               それはとおい遠い記憶

               夢に見た一つの幻想

               はなやいだ時代の

               心の中に立つ遺標

 

               それを掘りかえして陽にあてることはない

               それは遠い遠景の影法師

               しずかに真闇の中に抱きしめたまま

               ねむりゆく幸福に終われば良い

 

               忘れて眠る幸福に

               朝(あした)の歓びを知れるならば

               また再びの覇気よみがえり

               何かを求める力も生まれよう

 


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