ある一日の出来事

                    inspired by Maria

 

          午前の若い光輝く晴れた朝の公園を

          小さな少女が歩いていました

          白いフリルのいかにもかわいい洋服を着て

          真っ赤な靴は今日始めてのぴかぴかで

          何か理由があるのでしょうか

          お父さんに甘えっ子してうれしそうに

          スキップしながら息弾ませて笑っていました

 

          その女の子は私です

 

          午後のあつい太陽に熱気膨らむビルの谷間の雑踏を

          髪の長い若い女が歩いていました

          最先端の流行(はやり)を追ったきわどい色の服をまとい

          こけた顔にきつい化粧で武装して

          何か理由があるのでしょうか

          大きな都会に似合わぬほどの小さな瞳が

          ふるえるように誰かを何かをさがしていました

 

          その若い女は私です

 

          わびしいばかりの色に染まる黄昏時の住宅街を

          小さな老婆が歩いていました

          汚くくすんだ使い古しの服を着て

          疲れの凍みた顔や手にはしわやシミが刻まれて

          何か理由があるのでしょうか

          子供たちが元気に走るせまい歩道のはじっこで

          腰をかがめて眉をひそめ悲しい吐息を漏らしました

 

          そのおばあちゃんは私です

 

          神様私を助けて下さい

          私は帰って泣きました


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